2025年9月19日(金) 歯周病の本当の恐ろしさ、歯を失い、全身の病を招く

歯磨きをすると、時々歯茎から血が出る」 「朝起きた時、口の中がネバネバする」

これらの症状、単なる「お口の疲れ」だと思っていませんか? もしかしたら、それは歯周病が静かに進行しているサインかもしれません。

歯周病は、痛みなどの自覚症状がほとんどないまま進行するため「サイレント・ディジーズ(静かなる病)」と呼ばれています。そして、日本人が歯を失う原因の第1位は、虫歯ではなく、この歯周病なのです(※出典参照)。

しかし、歯周病の本当の恐ろしさは、歯を失うことだけにとどまりません。この記事では、歯周病がもたらすお口と全身への深刻な影響、そしてその脅威から身を守るための唯一の方法について、予防のプロである歯科衛生士の視点から詳しく解説していきます。

目次

  1. そもそも歯周病とは?歯肉炎との違い
  2. なぜ気づけない?痛みなく進行する歯周病の段階的症状
  3. 歯を失うだけではない。歯周病が引き起こす全身への深刻な影響
  4. 歯周病はセルフケアだけでは治せない決定的な理由
  5. 健康を守る砦。「歯科衛生士」によるプロフェッショナル・クリーニング
  6. 歯周病と闘うための鍵、「定期検診」の重要性
  7. まとめ:歯周病の恐ろしさを知り、今日から行動を
  1. そもそも歯周病とは?歯肉炎との違い

歯周病は、歯を支える組織(歯肉、歯槽骨、歯根膜など)が、歯周病菌によって破壊されていく感染症の総称です。よく混同される「歯肉炎」と「歯周炎」は、進行度によって区別されます。

  • 歯肉炎(しにくえん) 歯周病の初期段階。歯茎(歯肉)のみに炎症が起きている状態で、歯を支える骨(歯槽骨)の破壊はまだ始まっていません。この段階であれば、適切な歯磨きと歯科医院でのクリーニングによって、健康な状態に回復することが可能です。
  • 歯周炎(ししゅうえん) 歯肉炎が進行し、炎症が歯を支える歯槽骨にまで及んで破壊が始まった状態です。一度溶けてしまった骨は、基本的には元に戻りません。一般的に「歯周病」と言う場合、この歯周炎を指すことが多いです。
  1. なぜ気づけない?痛みなく進行する歯周病の段階的症状

歯周病が「静かなる病」と呼ばれる所以は、その進行過程にあります。痛みという明確なサインが出にくいため、気づいた時には手遅れになっていることも少なくありません。

初期症状

  • 歯磨きの時に歯茎から血が出る
  • 歯茎が赤く腫れぼったい
  • 朝起きた時に口の中がネバつく
  • 口臭が気になる

中期症状

  • 歯茎が下がり、歯が長くなったように見える
  • 冷たい水がしみるようになる
  • 歯茎を押すと、血や膿が出ることがある
  • 食べ物が歯に挟まりやすくなる

末期症状

  • 歯がグラグラと揺れ始める
  • 歯茎が大きく腫れて、強い痛みが出る
  • 噛むと痛くて、硬いものが食べられない
  • 口臭がさらに強くなる
  • 自然に歯が抜け落ちることもある

これらの症状に一つでも心当たりがあれば、すぐに歯科医院で診てもらうことを強くお勧めします。

  1. 歯を失うだけではない。歯周病が引き起こす全身への深刻な影響

歯周病の最も恐ろしい点は、その影響がお口の中だけにとどまらないことです。

歯周病によって炎症を起こした歯茎の血管から、歯周病菌やその毒素が血液中に侵入し、全身を駆け巡ります。そして、体の様々な場所で新たな炎症を引き起こし、以下のような深刻な全身疾患のリスクを高めることが、近年の研究で明らかになっています。

  • 糖尿病 歯周病は、血糖値を下げるインスリンの働きを阻害するため、糖尿病の症状を悪化させます。また、糖尿病の人は歯周病にかかりやすく、相互に悪影響を及ぼし合います。
  • 心筋梗塞・脳梗塞 歯周病菌が血管内に入り込むと、動脈硬化を促進する物質を出し、血管内にプラーク(血の塊)をできやすくします。このプラークが心臓や脳の血管を詰まらせる原因となります。
  • 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん) 唾液に含まれた歯周病菌が、食べ物や飲み物と一緒に誤って気管や肺に入ってしまうことで起こる肺炎です。特に高齢者や寝たきりの方にとって、命に関わる危険な病気です。
  • 早産・低体重児出産 妊娠中の女性が歯周病にかかっていると、歯周病菌による炎症物質が血中に入り、子宮の収縮を促すことがあります。これにより、早産や低体重児出産のリスクが約7倍にも高まると報告されています。
  1. 歯周病はセルフケアだけでは治せない決定的な理由

「毎日しっかり歯磨きをすれば、歯周病は治るのでは?」と思われるかもしれません。しかし、一度進行した歯周病をセルフケアだけで改善することは不可能です。

その理由は、歯周病菌の巣窟である「歯石(しせき)」にあります。

歯石とは、磨き残された歯垢(プラーク)が、唾液中のミネラルと結びついて石のように硬くなったものです。歯石の表面はザラザラしているため、さらに歯垢が付着しやすく、歯周病菌にとって格好の住処となります。

そして、この歯石は一度付着してしまうと、毎日の歯磨きでは絶対に除去できません。

  1. 健康を守る砦。「歯科衛生士」によるプロフェッショナル・クリーニング

歯石を除去できるのは、専門的な知識と技術、そして専用の器具を持つ歯科衛生士だけです。

歯科医院で行う専門的なクリーニングでは、「スケーラー」と呼ばれる器具を使い、歯の表面や、セルフケアでは絶対に届かない歯周ポケット(歯と歯茎の溝)の奥深くにこびりついた歯石や歯垢を徹底的に除去します。

歯科衛生士は、まさに歯周病からあなたのお口と全身の健康を守る「砦」となる存在です。

  1. 歯周病と闘うための鍵、「定期検診」の重要性

歯周病は、高血圧などと同じく「慢性疾患」であり、治療が完了しても再発しやすい病気です。そのため、治療後も健康な状態を維持していくためには、定期検診(メンテナンス)が不可欠となります。

定期検診では、以下のようなことを行い、歯周病の再発を徹底的に防ぎます。

  • 歯周ポケットの深さを測定し、病状の進行度をチェック
  • 歯科衛生士による専門的なクリーニング
  • 一人ひとりのお口に合わせた効果的な歯磨き方法の指導

3ヶ月〜半年に一度の定期検診を継続することが、歯周病の進行を食い止め、生涯にわたってご自身の歯と健康を守るための最も確実な方法です。

  1. まとめ:歯周病の恐ろしさを知り、今日から行動を

歯周病の本当の恐ろしさをご理解いただけたでしょうか。

  • 自覚症状なく進行し、気づいた時には手遅れになる
  • 日本人が歯を失う最大の原因である
  • 糖尿病や心筋梗塞など、命に関わる全身疾患のリスクを高める

しかし、歯周病は予防でき、そして治療・管理ができる病気です。その鍵を握るのが、歯科衛生士によるプロのクリーニングと、継続的な定期検診です。

「まだ大丈夫」という油断が、将来の大きな後悔に繋がるかもしれません。ご自身の歯と、そして大切な体の健康を守るために、まずは一度、歯科医院で歯周病のチェックを受けてみてはいかがでしょうか。

当院の歯周病治療についてはこちら

出典

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット. (2021). 歯の喪失の実態.
  • 特定非営利活動法人 日本歯周病学会. (n.d.). 歯周病と全身の病気.

 

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